『演劇クエスト』は海を渡り、マニラ(フィリピン)、デュッセルドルフ(ドイツ)、安山(韓国)で滞在制作を行うことになった。滞在は藤原ちからひとりで行い、現地の人々の協力を得ながら、異なる文化や環境に少しずつ身体を馴染ませていった。
「マリキナの美しい靴」
メトロマニラにある、かつては靴工場がひしめいていたマリキナという町。冒険者は「自分の足にあった靴」を探すためにこの町を歩きながら、河原に埋められた「死んだ犬」の噂を聞いたり、麻雀屋に忍び込んだり、水害で死んだ人たちの幽霊に会ったり、大統領の名が刻まれた首輪をつけた猫を探したりする……。上演は1日のみ行われたが、終演直後に突如やってきた豪雨によって「冒険の書」はびしょ濡れになり、もう読めなくなった。
「デュッセルドルフの恋人たち」
デュッセルドルフはヨーロッパで3番目に日本人が多い都市。そして様々な出自や背景を持つ人たちが住んでいる。冒険者は、電車やバスを使ってこの都市のほぼ全域を回りながら、各地に隠された物語を発見する……。短編スタイルが初めて採用された。
「安山のふたつの孤島」
ソウル近郊の安山は、ベッドタウンである東側と、移民街である西側とで大きく様相が異なり、互いに混じり合うこともない。冒険者は、バスに乗って様々な物語と出会いながら、東西のあいだにそびえたつ「見えない壁」を越境していく。